第4問【訴額】
賃料不払解除に基づく建物全部の明渡請求訴訟における訴訟物の価額について、正しいものはどれか。
1 建物価格の半額が訴額となり、滞納賃料請求は附帯請求となる。
2 建物価格の半額に滞納賃料請求が合算される。
3 建物価格の全額が訴額となり、滞納賃料請求は附帯請求となる。
4 建物価格の全額に滞納賃料請求が合算される。
正解 1
【解説】
訴額についても、よく出題される分野です(「訴訟物の価額」のことを「訴額」と言います。)。訴額については、民事訴訟法8条、9条で大枠が定められ、民事訴訟費用等に関する法律に詳しく規定してありますが、民事訴訟費用等に関する法律の内容全てを理解しておく必要はありません。実務的に理解しておくべきことで大丈夫です。
そもそも、問題文に記載してある「附帯請求」というのをご存じですか。第3問にも出てきましたね。民事訴訟法9条2項(これは六法で確認しておきましょう。)において「果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。」と定められています。「附帯の目的」の請求を「附帯請求」といいます。つまり、主たる請求に付随する請求で「おまけ」のようなものです。典型例が、建物でも土地でも明渡請求(これが「主たる請求」になります。)と一緒に、滞納賃料の支払いを請求する場合で、明渡請求が「主たる請求」、滞納賃料の請求が「附帯請求」になります。
民事訴訟法9条2項は、附帯請求については訴額に算入しないことを定めていますので、この場合、附帯請求である滞納賃料の請求は訴額には算入されません。
つまり、建物について、滞納賃料を一緒に請求しても訴額には関係ありません。場合によっては、固定資産評価額よりも滞納賃料額が多いにもかかわらず、固定資産評価を基準として訴額が決まるという、なんとなくすっきりしない事態も、生じます。
なお、不動産の明渡しについては、目的物の価額の2分の1を訴額とするとされています。したがって、建物明渡について、訴額は建物価格の半額です。ただし、土地の場合には、特例でそもそも土地の固定資産評価額の価額を2分の1とした価格を「目的物の価格」とすることになっています。そうすると、訴額はその2分の1、つまり、土地の固定資産評価額の4分の1が訴額、ということになります。
したがって、「1」が正解です。
posted by 弁護士宇野康枝 at 14:05| 東京 ☀|
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